庶民派グルメを標榜する友人の言葉に「三級ホテルの最高級料理」理論というのがあります。たとえば1万2千円の予算内でホテルの料理を楽しもうという時に、どこで食べるか・・・多くの人は一流ホテルのレストランを想像します。ところが、その友人はあえて二「級・三級ホテルのレストランに出掛け、そこで1万2千円分の料理を注文するというのです。一流ホテルの料理ともなれば、その値段は天井知らずで、1万2千円程度で食べられる料理などたかだか知れていますが、三級ホテルのレストランで1万2千円も出資すれば、その店で提供される最高級料理が堪能できるという考え方なのです。パスタ料理を味わう場合に思い浮かべるべきなのは、この「三級ホテルの最高級料理」理論です。パスタはイタリアの庶民料理です。
王侯貴族が口にする宮廷料理とは異なり、一般的な庶民が楽しめる「民の料理」で、それこそ炭焼き職人(すなわちカルボナーラ)までもが舌鼓を打てるのがパスタです。肉料理・魚料理などをメインとする宮廷料理が天井知らずの予算を必要とする一流ホテルのレストランだとすれば、パスタ料理はそれ自体がすでに三級ホテルのレストランで提供される食事の資格を持っています。だとするならば、パスタ料理の専門店で最高級の品をオーダーすれば、王侯貴族でも滅多に味わえない味覚を堪能できるということになります。それでは、パスタ料理専門店で最高級品とはどのようなものでしょうか。パスタの原材料となる小麦にもピンからキリまでありますが、中でも最高級品との呼び声が高いのはデュラム・セモリナだといって間違いはないでしょう。デュラム種の小麦は、パンやうどん等に使われる軟質小麦とは違って、タンパク質をたくさん含んでシコシコした感触が魅力の硬質小麦です。
このデュラム小麦を粗挽きにしたのがセモリナで、パスタ用小麦粉の最高級品とされている逸品です。パスタ発祥の地・イタリアでは、添加物を一切使わない100%の小麦を使わなければならないという厳格な法律が制定されていますので、イタリア直輸入のデュラム・セモリナを使ったパスタは衝撃的な美味しさです。しかも、何しろ庶民料理ですから、専門料理店で3千円から4千円も出資すれば、この美味しさに手が届きます。シンプルに、ジェノバソースやボローニャソースを掛けただけでも十分満足できる味わいです。